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お世話になった会社を出て、そのまま 真っ直ぐ 警察へと向かう哀歌。
歩く道すがら… 思いを馳せていたのは 自分、【橿原哀歌】の事ー……。
私は 元来、 正義感が強い方らしい。
そうなってしまった原因は 凄惨な過去の所為…。
……犯罪被害に遭った時に、 警察の方には とてもお世話になった。
私はその時の恩を決して 忘れてはいないし、
その時、 警察官の方から「警察官になってみない?」と誘われたのだ。
私には盲目の正義感があるし、ちょうど良かったのだが、警察官になるのには警察学校を出ないとなれない…。学校嫌いな私はそこがネックで 諦めた。
……ごめんなさい、 ごめんなさい……っ、
【私は貴方方を裏切った…。あんなにお世話になったのに…、恩を仇で返すなんて……】
【…尤も 憎むべき相手と同じ場所まで堕ちてしまった…】
私は【大きな罪・巨悪を裁く為には、多少の犠牲も仕方無い】とは思えない。
そんなのはいけない。あってはならない事だ。
私が狙うのは【犯罪者】のみ…。
余命宣告を受ける前から、
ドナー登録も考えていた。
【こんな私でも 誰かの為になれたら…】
しかし、怖い事例を見てしまった…。
ドナーの臓器を移植希望者に移植したが為に、その希望者は亡くなった、と……。
私はこのニュースを見た時、怖いと思った。
【善意で他者を殺める事になるなんて…】
しかも
【移植希望者は僅かな・微かな、希望を掴み取る事が出来た人達。…此れでやっと助かる、と……。……だのに、其の希望を打ち砕き、絶望の淵へと落とす事になってしまう…】
これでは初めから何もしない方が 余程マシだ……。
希望という明るい光、アリアドネの糸を垂らしておいて、それを途中で断ち切り、絶望のどん底へと叩き落とすのだからーー……。
…だからか?
ドナーは止めてしまった。
それとも、残り少ない命だと解った瞬間に 憎いアイツ等も道連れにしてやろう…、
そう、 復讐の炎が心にめらめらと宿ったのか…?
私は今までの事を走馬灯の様に思い起こしながら 諮詢しつつ 一人歩いていた。
そして もうすぐ、 警察署に辿り着く、
そんな時 突然に 後ろから声を掛けられ、腕を引っ張られた……
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