標的No.2丹波 由二

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男は愛妻の話題を出した途端に態度がより切迫した態度になった。 「橿原ァッ!お前、あいつに何をする気だ!ふざけんなっ!あいつに手ェ出したら殺すぞ!!」 男は怒声を浴びせてきた。 「…短慮ね。こんな馬鹿共に抵抗出来なかったなんて自身で悲しくなってくるわ…。私が、奥さんが、何処に居るのかも解りもしないクセに……。」 …私は自身に失望し、ぼそりと呟いた。 「取引しましょ?貴方が私の言うとおりにしてくれたら可愛い奥さんには何もしない」 「取引って何をだ…っ!?……お前、【変わった】な」 「……えぇ、お陰様で」 私ははらわたが煮えくり返りそうになるのを堪えながら、声に怒りの色が出ない様に必死に努めた。 「取引内容を言うわ。貴方、今、其処で自ら死んで?あっ、音が解る様にしてね」 私の提案を聞いた男は唖然として言葉が中々出ないでいた。 「……お前…、気でも触れたか?」 「えぇ、ダレカサン達の所為で随分前に、ね…。」 少しの間、沈黙が有った。 そして男は決心したのか、 「…俺がしっ、死ねば…、本当にあいつには手を出さないでくれるんだよな…っ!?」 「えぇ…。私は嘘は吐かないわ。奥さんに罪は無いもの…」 「…解った…、死んでやる…。…ははっ、まさか、今頃になってお前に復讐されるとは思わなかったわ…」 「やられた方はいつまでも覚えているものよ…」 「……そうだな…」 男は最期に一言納得の言葉を言って、 グサッッ!! 包丁の刺さる音がした。 「…ッ、ゥグ……ッ!!はぁ…っ、ハァ…、こ、れで…、まん ぞく、した、ろ…?」 「えぇ。貴方は案外、家庭的なのね。可愛い奥さんだから?結果的に貴方は約束を守ってくれた…だから私も約束は守るわ」 …もう、聞こえてはいないだろう男に向かって話し続ける。 「…貴方は【まだ、マシ】だったのかしら……?最期に少しは反省してくれた?それとも奥さんの為だけ?」 哀歌はそれだけ言って電話を切り、続けてソウマに電話をする。 「…もしもし?ソウマくん?こっちは片付いたから…。ありがとう。奥さんを解放してあげて。それと丹波宅宛にダイスとタロットカードのⅣの皇帝【信頼】とⅦの戦車【意志の強さ】のカードを送っておいて」 「…了解した」 復讐相手にⅣ皇帝の正位置【信頼】を送るなんて…変な話よね…。 …でも、約束は守ってくれたから…。 最後の餞よ…。 橿原哀歌の胸が また、 ちくりと痛んだ。 若地の時よりも…
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