ep.1 『Barにて』

8/10
前へ
/65ページ
次へ
確か僕が店に入った時、 このあたりの席は客も店員も楽し気に騒いでいた。 それも、初めまして~とか自己紹介的な感じではなくて、 いつもの仲間みたいに、ごく自然な感じで…。 「俺どこ行ってもそんな感じだから。  初対面の人でもフツーに仲良くなれるし」 「……」 …それは羨ましいことで。 「それに多分、歳も同じくらいだし」 「なんでわかる?」 「ほれ」 彼は僕の開いていたノンアルコールメニューに被せて、 自分の飲んでいるグラスを見せてきた。 …純度100%の見事なオレンジだこと。 「未成年でここに居るってことは、18か19だろ?  俺19」 「…同じだ」 「んねっ?」 「………」 ……何なんだろう、この人は…? ――さっきから…キラキラ、キラキラ、して。 「……  …あ」 「ん? なに?」 「じゃあ、さっき言った『俺と一緒に飲もうよ』って、  オレンジジュースをってこと?」 「…ぶはっ! そんなコト!?  で今頃っ!?」 「…?」 彼が、笑っている。 今度は目と目が合っているわけでもないのに、 …なぜだろう? また僕は、瞬きの仕方を忘れたようにそこから目が離せなくなる。 ……何なんだろう……この、気持ちは?
/65ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加