14人が本棚に入れています
本棚に追加
◆◇◆◇◆
「お疲れ様です。お先に失礼します」
「お疲れさま~」
大学が夏期休講に入ると、
僕も夏来もほぼ家とバイト先の往復という生活スタイルになっていた。
休みが重なれば一日一緒に居たりすることもあるけれど、
僕とは違って社交的な夏来は基本的には遊びまわっているので、
同じ家に住んでいても、そんなに毎日同じ時間を過ごせるわけでもない。
でもそれで十分だった。
おばちゃんだらけの職場を挨拶もそこそこに飛び出して、
今日もあの部屋へ帰る。
今日は僕が早上がりなので、先に着いて夏来の帰りを待つことになるだろう。
簡単なものになるけれど、夕飯を作っておこうかな?
そういえば冷蔵庫にカボチャが残っていた。
サラダにするために買ったやつだけど、煮つけにしてみたらどうだろう?
今まで夏来には洋食系しか作ってやったことがなかったから、
珍しく和食を仕込んで待っていたらびっくりするかも。
リアクションを想像してちょっとウキウキしながら、
軽い足取りで家路を急ぐ。
「おかえり~。早かったな」
と思ったらもう居た。
「なんでだよ」
「!?」
思わず毒づいてしまえば、
夏来は目に浮かぶような「?」マークをしっかりと頭の上に乗せ、
僕のことを見つめつつもテレビの続きも気になるようで、
黒目だけ右へ左へカチカチ動かしながら困っていた。
そんな様子を見ていたら、堪らず笑ってしまう。
「???」
「ただいま。カボチャサラダ作るから手伝って」
「?
お、おう」
こんな日常が当たり前になっていくことが、
とても幸せで、
まだ何となくくすぐったくて、
ずっとずっと大事にしていきたいと思っていた。
最初のコメントを投稿しよう!