ep.1 『Barにて』

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意外と重いドアを開けてまず目に飛び込んできたのは、 カウンターの頭上から逆さにぶら下がって並んでいるカクテルグラスだった。 続いて、中身にどんな違いがあるのかは僕などにはまるでわからない、 そこかしこにひしめいている無数のボトルたち。 そして耳に飛び込んで来たのは、 大音量というには些か控えめなボリュームで流れるモダンなジャズミュージック。 初めて足を踏み入れた店内は、 予想に反して…と言ったら本当は失礼なのだけれど、 お酒や内装にこだわっている、 ベーシックなショットバーと同じようにしか見えないお洒落な空間だった。 「………」 「こんにちは」 「………  ……どうも」 「この店初めて?」 「……はい…」 店員さんも、いかにも普通の人だ。 もっと、こう…テンションが高くて、オネェ言葉なんか使ってきたりするのかなって、 …そんな風に思っていたんだけれど。 やっぱり僕は、偏見が強いのかもしれない。 頭が固いとよく言われるのは、そういうところから来ているのだろうか…。 「あっちの方に初めてっぽい人たち集まってるよ~」 「本当ですか?  行ってみます。ありがとうございます」
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