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その時の僕は、一人で抱え込むことに限界を感じ始めていた。
中学高校ぐらいまではまだよかった。
自分はまだ子供だから、恋愛というものをわかっていないのだと
思っていればよかったから。
大学生になり、未成年といえども「子供」とは思い難くなって、
自分は本物なのだと思わざるを得なくなった。
本当に、同性しか好きになれない体質だったのだ、と――。
堂々としていられたらどんなに良かっただろうと思う。
悪いことをしているわけでもないのに、
世間に対して勝手に心を閉ざしているのは僕の方だ。
けれど僕は、そんな風に凛と振舞える人間じゃない。
家族に知られたら泣かれてしまうかもしれない。
友達に知られたら嫌われてしまうかもしれない。
そう考えて自分の殻に籠ってしまう側の人間なんだ。
でも、きっとそういう人の方が多いと思う。
聞いたわけじゃないからわからないけれど、きっと、恐らく、多分。
そしてこういう店に来れば、
同じような悩みを持っている・持っていた人に会えるだろうと思った。
だから思い切って、
凄く思い切ってこうしてここまで踏み込んで来たのだけれど……
それ以前に、僕はコミュニケーション能力が極端に乏しかったのだ。
まず男だろうが女だろうが知らない人に話しかけること自体が困難だった。
事前にネットで調べて来た通り、
店に入るとすぐに店員さんが声をかけてくれたのは助かった。
僕は未成年なのでお酒も飲めないけれど、
ソフトドリンクだけでも嫌がられはしないという情報も多分本当だろう。
一番聞きたかった、初心者が固まっている席を早々に教えてもらえたので、
とにかく一目散にそっちの方に行くことにした。
「(よかった。これで少しは、いや、かなり気が楽になったな)」
……ところが。
「(…ん?)」
少し困ったことになった。
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