オルター・洋子「龍平洋漂流記」より 第6章 水底の天使たち

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「羊の木」(2018公開)その2            …「演技派」ってそんなに偉いの?  関ジャニの錦戸亮。顔も初めてきちんと見ました。 ジャニーズの中にもついに、時代の要求する「かさかさセクシー」(※注1)がいるなぁ、くらいに思っていたが、演技、素直な感じして、思ったよりカサカサしていなくて予想外に素敵な人でした。これからきっと見る目が変わる。  松田龍平は裏番(ウラバン)だった。やっぱり。 「触れなば落ちん風情の人殺し」とでもいおうか つまりデビューの時の、あの子と同じです。  レゴタウンの住人みたいな可愛い宅配の制服、一番上までボタン留めて トミカみたいな宅配ミニバンを運転してきて ドシドシ人をひき殺し 「友達?」と涙をいっぱいためた目でじっと見たあと いきなり首絞めてきて、やっぱりやめて 最後は「モロトモニ」だったか… 月末が悦んで死んでいたら宮腰は立派な「オム・ファタール」だった。  見てる側は、どうしてなんだろう、何だろうと思いながら見てる だけど宮腰一郎はなんのトッカカリも与えてくれない 見返せば見返すほど、宮腰一郎が見る側から離れてゆく(萱場杢の時は、見返せば見返すほど理解できたのだが)  それは、宮腰は誰にも理解されない、という設定だからか。 でも「理解できない人間だから答えはないんだよ」と言われたらそうですか、と黙るしかない。オイテキボリされた。  宮腰は月末の首を絞めるのをやめた。 私はちょっと希望を持った。 次の瞬間、あれだもの。いきなり手を掴んで、きっと強く握ったでしょ。 彼女なんて結局どうでもよくて、問題は月末だったんだ 少し腑に落ちた直後、今度はのろろ様だ オイテキボリの上、梯子まで外された! 切なさとか、笑とか、何でもいいけど感情が生まれるための湿り気と時間が私には全く足りなかった。勿論計算済みの唐突なラストなんだろうけど。  死は終わりではない、とボブ・ディランに歌われてもまっすぐ心に入ってこない、そんなスピード感あるリテラシー(?)持ち合わせてない。エンドロールが煙のように波に消えてゆく頃になってやっと、余韻とも違う、腹立たしいような気持すら湧きあがった。
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