オルター・洋子「龍平洋漂流記」より 第6章 水底の天使たち

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 彼女の文章は大抵お嬢さんとの日常だが、その日常はすごく異常。読むたびに、本当に悲惨なこと、理由が説明できないこと、でも逃れようのないことが世の中にはあるんだなあ、と、何の苦労も味わったことのなかった32歳の私は思ったものだ。それだけじゃない。彼女の書くものは、辛い残酷なことも、笑っちゃうことも、美味しいものの話も、読んでる本の話も、役所公司も、とにかくイッショクタに、ゴチャゴチャで、読んでるこっちの気持ちもゴチャゴチャになってくる。そのうち、私は彼女の文章を読むのがしんどくなって、クラスを休むようになった。  逃れようもない悲惨なことは、ただ生きてるだけでも出会ってしまう。 だから、どんなにちっぽけな悲惨でも、私はわざわざ見に行ったりしたくない臆病者。 お化け屋敷も嫌い。ホラー映画も嫌い。動物園も嫌い(だって動物たちは皆、こころもと無さそうにしてる)。ペットショップも初めの10分は楽しいが、「このベロ出して寝てる犬はウリモノなんだ」と気づいた時点で、みぞおちの辺りがざわついて家に走り帰ってしまいたくなる。 ディズニーランドも人工的なフレグランスつきの柔軟剤同様、気持ち悪い。 あぁ…「羊の木」の話は一つも出来ていないね。 とにかくモヤモヤモヤモヤしている。 私は、宮腰一郎は、やっぱり天使の一種じゃなかったかと思う。 海の底から来て海の底に戻って行ったんじゃない? 人間の友達がちょっと欲しかった、みたいな 被害者家族の問題とか、色々あるだろうけど 彼女には逃げられたけど、(宮腰自身たいして執着してなかったみたい) のろろ様も、怒ったのか喜んだのか判らないけど 私は味方でいよう。だってタイプだもん。 演じた松田龍平は最高に素敵でした。 青い服着て斜めにどこかを見てる底知れぬ目 モールス信号送りたくなる目
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