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朔郎は別れた妻がほとんどの物をそのまま置いて行ったから仕方がないと言った。
「だったらサッサと処分すれば良いのにこれじゃあ部屋が狭すぎるわ」
綾子は朔郎の会社に二年前に入って来た。それが二ヶ月前の送別会で酒に溺れた朔郎を見てから母性本能がどっと吹き出して無視できなくなっていた。
「何か一緒に暮らしてくれそうな口ぶりだなあ」
綾子は入社以来、朔郎には愛嬌を振りまいていた。彼はその延長で軽いノリで言わせた。
「職もなくぶらぶらしている人とやっていけると思ってんの」
綾子は本気で言っていないのは眼を見れば分かった。しかし半分は嘘でもないことも伝わって来た。やはり生活を考えると不安なのだ。
「それに付き合ったのはまだ二ヶ月よ。そんな言葉はよしてよ」
彼女まだ新鮮な気持ちを持続したかった。
「会社では二年も一緒じゃないか」
「同じ職場に居るからそう云う事になるわね。・・・それより仕事の事を考えてんの」
綾子が軽い気持ちで言って居るのは分かったが今の朔郎には最大の不安であった。それを指摘されるとやはり気が重くなる。
彼は窓際に座り込んでけだるそうに外を眺めた。いい加減な態度にむかっと来たが、彼女は掛ける言葉を失い出直すことにした。
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