第一章

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 今の会社は妻になった 佐恵子が見つけて来た。住む場所も働く所も彼女が探し出した。それだけ佐恵子は結婚に焦っていたのだろうか? だが言い換えれば俺は佐恵子に振り回された格好になった。挙げ句が俺の前を去った。俺にとって彼女の存在は一体何だったのだろう。  朔郎はハローワークを出てから御堂筋を淀屋橋まで歩いて来てしまった。京阪電車の乗り場が目に入った。  これに乗れば佐恵子の居る京都へ行ける。行ってどうなると云うのか、軽蔑の目で見られるだけだ。いや、知り合ったあの頃の佐恵子なら親身に相談に乗ってくれるかも知れない。  朔郎の足は駅に向かった。料金表を眺めていると突然に北村と云う声に振り向いた。 「どうしてるんだ」  呼び止めたのは狭山だった。狭山はデザインの原稿を届けての帰りだった。会社の近くだから誰かに会うかも知れないと思っていたがそれが狭山で安堵した。  狭山は腕時計に目をやってから喫茶店に誘った。  この歳になれば希望の職種に付けない不満は募るばかりだ。それなら自分で独立してやる手もあったが、得意先との個人的な繋がりを付けて来なかったことが悔やまれた。 「ハローワークの帰りか、やっぱり四十過ぎでは無理だろう。しかし帰る方向が違うじゃないのか、家なら地下鉄に乗るんだろう」  狭山はなぜ京都方面の駅にお前が居るんだと云う顔をした。その何かを匂わす顔が思わず懐かしくなった。 「狭山、お前、新婚時代は俺のアパートにも遊びに来ただろう多恵さんと一緒に」     
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