第一章

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「そんなこと私が知ることないでしょう。ただ旦那さんでなければ子供のかおりちゃんかしら。あの子に何かあったんじゃないの・・・。それとも違う子かしら」 「違う子ってどういうこと?」  一緒に食事をしていた長女が口を挟んだ。  狭山と多恵は話題を変えた。食事が終わって子供達が部屋に戻った。  多恵は食事の後片付けをしてからコップをひとつ持ってきた。狭山は先にひとりでビールを飲んでいた。 「今日はあたしも一緒に飲むわ」  狭山は多恵のコップにビールを注いだ。 「貴方に入れてもらうのも久し振りね」  佐恵子と朔郎の話題は二人の新婚の想い出とだぶった。だが二人が朔郎と佐恵子の子供の話になると表情が厳しくなった。  多恵には狭山から佐恵子が再婚しても子供は一人だと聴かされて気になった。  彼女は再婚したあと最初の子が逆子で、しかも胎盤が首に巻き付いてお産の時に死なせたと、狭山は朔郎からさきほど聴いた話を伝えた。 「それでそのあとは子供が出来なくなったらしい」 「そんな込み入った話までどうして長いこと会わなかった北村さんに佐恵子さんは言ったのしかも突然会って・・・」 「そう言われてもなあ、なんせ佐恵子さんは思い切った事をやる人だからなあ」     
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