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「十八で高校三年になるわ」
「じゃ次の春に卒業するのか」
躰の線は崩れていない。あれから子供は産んでいないのか? 正幸がそれで納得しているのだろうか? 此の疑問に今一度、佐恵子の瞳を見直した。
彼女は、此のひとは何を考えているのだろうと云う目をしていた。
これは恋人時代からそうだった。悪意はないのは分かり切っていた。だがなんだか自分が尊敬に値しない人に取られて不愉快だった。今も朔郎は佐恵子のその瞳に押されぱなっしだ。彼はその瞳に向かって切り返した。
「正幸とは上手くいってるのか?」
「え、え」
彼女はちょっと言葉を詰まらせてから。
「上手くいってるわよ」
それがどうしたと 彼女は押し返した。
「正幸か・・・。あいつは卑怯だ!」
「貴方にそんな事を言う資格はないわよ」
「さあ、どうだろうねぇ」
「どう云う事なのよ」
「まあいい。あいつはあいつで苦しんでいるだろうなあ」
一瞬、彼女の顔がこわばった。
「まだそんなこと言ってるの。もう何しに来たのか分からなくなってくるでしょう。あなたがそんなに執念深い人とは思わなかったわ」
次に彼女は呆れたように作り笑いを浮かべた。佐恵子は表面では笑っていても瞳は動揺していた。
「本当に何しに来たんだ」
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