15人が本棚に入れています
本棚に追加
「…いいよ。ケンちゃんとまた話せて嬉しかった。ふぇんちゃんにも逢えた。約束も守った。想い残したことは無くなった。僕はもう行かないけんから行くよ? ケンちゃん。もしまた逢えたら、また友達になってね? 楽しかったよ?ありがとう。幸せだった。」
「ヤス? ありがとな! またな!」
それを聞いてから
白い塊はふんわりと天井に浮かんで、蒼白く光って、消えた。
それから兄貴とふたりで、笑いながら朝まで泣いた。
ビールグラスを3つ出して、朝までずっと。
翌日俺はフェリーで広島に帰った。
帰りしな、弁天埠頭まで送ってくれた兄貴から、ヤスくんちへ渡してくれと線香代を受け取った。
俺は確かにと、受け取ってフェリーに乗り込んだ。
デッキに上がり、下で見送る兄貴に聞いてみた。
「約束。結局なんやったん?」
兄貴は本当におかしそうに笑って言った。
「死後の世界や幽霊なんて信じないってヤスがずっと言うから、じゃぁ、どっちか先に死んだほうが、化けて安眠妨害しようや。ってな?ははは。俺の勝ちー!」
俺もお腹から笑って、兄貴に手を振って別れた。
この件は、俺としては、すごく考えさせられた貴重な一件になった。
あんなにはっきりと話せると知ったのは初めてだったし、何よりも、ヤスくんが言ってた、
「また逢えたら、また友達になってね。」
これが本当なら、
報われる魂がもっとたくさんあるかもしれない。
今でも、ずっと、
この自慢の兄貴たちの再会を心から祈っている。
最初のコメントを投稿しよう!