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「…俺ら展望台に居ったんじゃ。自販機のとこにの。そしたらあいつが……あの女が見えたんよ。展望台の階段の下に。ほんで、ハルが声かけたんよ。幽霊か思うたけん怖かったんよな。したら、女がこっちに登って来たんよ。もの凄い速さで。笑いながら。四つん這いで。」
「えっ?人間じゃろ?女じゃろ?」
「…わからん…。ただ、すごい臭かった。なんか…獣臭い。辺りが獣の匂いで充満しとった。」
その時、突然真上から甲高い笑い声が降ってきました。
みんなで見上げると、白い女が四つん這いで、垂直に切り立った崖を降りて来るのが見えました。
「うわぁ~?はよ走れ!!」
軽トラの頭をバンバン叩いて、急かすけれど、付け焼き刃の高校生のドライビングじゃぁどうしようもなく、もぅはっきりと表情が分かるほどに女は近づいていました。
あの顔。
ほんと一生忘れない。
真っ黒く光るほどに黒い顔に、
真っ赤な血の色のような目がギラギラと、
口は耳元まで裂けて、ヨダレを撒き散らしながら、四つん這いで向かってくる。
ただ、鼻を見た記憶がぜんぜん無い。
無かったんだろうか、見る余裕が無かったのか、よくは分かりませんが、間違いなく、この世のものではありませんでした。
もぅ明らかに追いつかれる。
とにかく何とかしなければと思い、数珠を目一杯振って、早九字をぶっ飛ばしました。
すると女は体勢を崩し、九字の鋒から逃げるように山の中へ逃げ帰りました。
そのまま俺らは無事に、ふもとの港に降りて、事なきを得ました。
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