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とにかく、並みの男よりも、気が強くて意思も強い。
腕っぷしもかなり強い。
なにせ、華奢な体格に加え絶世の美貌をしている所為で、これまでそっちの方でとんでもない苦労をしたらしい。
故に、我が身を護るために、御堂は真剣に道場に通い、キックボクシングと中国拳法を身に付けたそうだ。
しかし、この縦社会にあっては、上に逆らうにも限界がある。
聖がその得意の蹴りを見舞って、青菱史郎を蹴り倒すわけにもいかないのだ。
――――だが……。
「御堂さん、その……青菱史郎の呼び出しには、今後、応じない方がいいんじゃないんですかね。それが難しいのは分かりますが、色々と理由を付けて――オレも、協力しますから」
すると、聖は嘆息した。
「――――オレもそうしたい。以前も、用事があるって言って、あいつを無視した時があったんだが……」
「上手くいかなかったんですか? 」
「上手くいくも何も、そっから拉致監禁されて一ヵ月ヤリまくられた」
「……」
「解放された後、さすがに一週間寝込んだぜ。ホント、最悪だった」
その時の事を思い出したのか、聖は憎々し気に吐き捨てた。
「一体全体、オレにどんな恨みがあるんだか知らねぇが、事ある毎に呼び出しちゃあ好き勝手にヤリやがって! こちとら、あいつに嫌々五年も付き合ってやって、ようやくお役御免で自由になったハズなのに、いい加減にふざけんなってんだ! 」
聖はそう言うと、了に「明日の予定は、午後からに調整してくれ」とだけ告げて、直通エレベーターへふらつきながら消えて行った。
頭を下げながらそれを見送り、真壁了は理解する。
どうやら、御堂聖と青菱史郎の想いは、完全にすれ違っていると。
了は、聖に付き従ってまだ日は浅いが、青菱史郎の情報は周囲から収集し、すでに解析済みだ。
ヤツは、御堂聖に完全に狂っていて、骨の髄まで喰い尽くしたいほどに惚れていると。
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