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 それから間もなく、青菱史郎は、合法ドラックの利権を巡り、中国系半グレ集団【黒龍】と抗争に入った。  いや、それは正しくは、抗争とは言えないだろう。  青菱組の若頭として、史郎が直々に、青菱の下部組織へ半グレ【黒龍】の徹底攻撃を命じたのだ。  元々、極道である青菱を怒らせた原因は、黒龍側にあった。  二十歳そこそこの恐れを知らぬ若者たちは、本職の極道の恐ろしさを見誤り、何と青菱相手に合法ドラックの裏取引の件で恐喝をしてしまったのだ。  最初のうちは、ヤクザなど怖くないと嘯いていた彼らも、家族が襲撃に遭ったり家に火を点けられたりと次々に追い詰められ、本職の怖さを知り、恐れおののいた。  最終は、青菱によって、自分たち全員が惨たらしく粛清されると。  それを回避するにはどうしたらいいのか、彼らは思考を巡らせた。  何とかして、自分たちが安全に本国(香港)へ脱出出来るよう、青菱史郎と有利に交渉しなければ!  必死にその方法を考えた彼らは、その材料にするべく彼のオンナを人質に取ろうと思い至った。 ――――ヤクザの間では有名だった。  青菱史郎には、傾国の美女と呼ばれる、ぞっこんのオンナがいると。  そしてそのオンナは女ではなく、美貌の男だと。  こうして御堂聖は、本来なら無関係であった筈の、この抗争に巻き込まれる事となってしまったのだ。  聖は半グレの襲撃に遭い、拉致された。  そして彼等の潜伏先で、合法ドラッグを大量に摂取させられ、危篤状態に陥りそのまま救急病院へ担ぎ込まれた。  史郎が、たかが半グレ集団と侮った結果が、最悪な事になった。  彼の傲りの所為で、聖が死線を彷徨う事となってしまったのだ。  さすがにこれには、聖の親代わりだった天黄正弘も激怒した。  史郎の想い(・・・)は本物だからと目を瞑って来たが、今回ばかりは勘弁ならない。
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