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早起きなかもめが優雅に飛んで影を落としていく。長く続く防波堤の横をグングン進むとふいに開け、漁港に並んだたくさんの釣り船がゆらゆらと揺れていた。
堤防に到着すると猫背な背中が釣り糸を垂れているのが見えた。まだ若い太陽の光を浴びたふわふわの髪が茶色く輝いている。
「おはよーみゃーちゃん!」
急いで自転車を止め、釣り竿をいくつも並べているみゃーちゃんこと宮野晴乃の元へと駆け付ける。
「遅いー」
「ごめんごめん、寝坊しちゃった」
謝りながら隣に腰を掛けると宮野の持ってきたクーラーボックスはまだカラのままだった。
「あれ釣れてないじゃん」
「あーうん、なんかぼんやりしてたら逃がしちゃった」と、宮野は眠たげに瞼をこすりながらふにゃりと笑った。
宮野は幼稚園の頃からずっと一緒で、高校生になった今も一番仲良く遊んでいる友達だった。
田舎に似合わないような綺麗な顔をしている男の子。
もちろんこの辺だけじゃなく、隣町にも宮野のファンだという女の子がたくさんいるし、都会に行ったら絶対スカウトされるよ!と力説するクラスメイトもいる。
だけど当の宮野はそんなことを全く意に介さず、堤防で釣り糸を垂れているのが好きだという。
「光多がいつくるのかなーって思いながら待ってたら眠たくなった」
ふああ、と大きなあくびをすると猫のように体を伸ばす。
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