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「おなかすくかなって思っておにぎり握ってたら時間かかっちゃった」
「え、なに、おにぎり持ってきてくれたの?中は何?」
宮野は首を伸ばすと光多の背負っていた荷物の中を覗き込み、声を立てて笑った。
「こんなにもってどこに行く気だよ」
水筒、お菓子、マンガに日焼け止め。敷物にひざかけ、小さめなクッションまで入っている。
「だっていつもみゃーちゃん寝るじゃん!」
「寝ないって」
「寝てる。いっつも俺のこと枕にするから、今日はクッション持ってきた」
釣り糸を垂らしながらゴロリと横になり「ちょっとだけ」と言いながら光多の太ももを枕にしてお昼寝に入るのだ。そのたび動けなくなるし、足は痺れるしで散々な目にあっているのだ。
「まーいいや。それよりおにぎりどれ?」
「ちょっと待てよー。ええとこっちが梅。これが鮭で、こっちが唐揚げ」
「おーうまそう」
それぞれにカラフルなテープが貼られ中身が何かが書いてある。
「いっつも思うけど、光多の女子力の高さな」
宮野はひとつを取り出すと、チェックのテープを文字を見ながら笑った。
「高くないっつーの。これ姉ちゃんの。みゃーちゃんに女子アピールらしいよ」
光多には2つずつ年の離れた姉が2人いた。彼女らがみんな宮野を狙っているというのが笑える。
家では女帝のように君臨しているのに、こういうときだけ女子力を見せるのだ。
「じゃあ、握ったのも?」
「それは俺」
「光多のおにぎりかー。覚悟して食べるべ」
宮野はクスクスと笑いながら大きなさんかくのおにぎりをほおばると目を細めた。
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