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ジリジリと太陽が照らしている。
いつ捨てられたのかわからないヒトデが干からびたように堤防の上にいくつも転がっていた。
波は穏やかで静かに引いては満ちてを繰り返している。立てられた釣り竿が何本か並んでいるさまを眺めていると、ああ、やっぱりこの場所が好きだなと光多は思った。
「ねー。みゃーちゃんも卒業したら出ていく?」
「ん?」
「この街から出ていきたい派?」
小さい時からずっと一緒にいたけど、高校を卒業した先はそれぞれでみんな離れていく。そうやって先輩たちもいなくなった。残るのは地元に働き口のあるような人や、漁師や親の会社のあとを継ぐ人たちばかりだ。
就職先も少ないし、いつかみんな出て行ってしまう。
「こうやって一緒に釣りをできるのって、いつまでなんだろうなあって」
「……」
隣を向くと宮野は怖い顔をして海をじっと見つめていた。
「みゃーちゃん?」
「おれは」と宮野は口を開いた。
「どっちでもいい。光多が残るならここにいるし、出ていくなら俺も出ていく」
いつもの柔らかく優しい声とは違って硬い声色だった。
「お前といれるならどこでもいい」
「そんなわけにはかないっしょ」
エリアに一か所しかない学校とは違うのだ。大人になって出ていかなきゃいけない世界は広い。それを知らない宮野じゃないのに、どうしたのかと顔を覗き込むとバチっと視線がぶつかり合った。火花が散るような熱さ。
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