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「みゃ、」
「好きだよ」と宮野は光多の腕をつかんだ。
「光多が好きだ。だから、離れるつもりはない」
「みゃーちゃんっ」
掴まれた場所が熱くて、痛くて、光多はひるむ。
「何、言って」
「ずっとどうしようかって悩んでた。でも、やっぱり無理だわ。ほかの女子を幸せにする光多とか、お前の作るおにぎりを食べるのが俺以外の誰かとか、ちょっと無理」
釣り竿の先がチリンと音を鳴らし、何か魚がかかった音がしているけど宮野はそれを無視して続ける。
「お前は?俺と離れても平気?」
「……、」
「無理だよな?俺は絶対無理」
チリチリチリ、と涼やかな音が止まない。大物がかかっているかもしれない。
「好きだ」
「みゃーちゃん」
掴まれた腕を引かれたら、自然に体は宮野の胸の中に倒れ込んだ。じっとりと汗ばんだTシャツからは彼の匂いがしている。懐かしくて、ずっと隣にあるのが当たり前の匂い。
「お前も好きだろ?」
何年も一緒にいたのに、今はそれ以上の近さにいる。こんなふうに体温を感じる距離にいることが不思議だった。
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