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「好き、だけど、え?待って、みゃーちゃん」
光多よりもいつの間にか背も大きくなって、体もひとまわりくらいでかくて、かっこよくて、優しくて、穏やかで、大好きなみゃーちゃん。
「……急いでどうこうしたいってわけじゃないんだけど、でも、そういうつもりだってわかってて」
宮野の体を通して耳に届く声に、光多はぎゅっと体をすくめた。こんな距離を知らない。
慌てたようにコクコクと頷くとやっと安心したように宮野は力を緩めた。解放された時には緊張で変な汗をかいていた。
言いたいことを言ってスッキリしたのか、宮野は光多を離すと釣り竿に視線を移す。釣り竿は重たげにしなり、リールを巻くと海面にゆらりと黒い魚影を浮かべた。
釣りあげると針にかかっていた魚がビクビクと体を跳ねらせている。
「おお、やっと釣れたー」
何事もなかったようにいつもの緩い笑顔を浮かべ、宮野は魚に手をかける。慎重に針から外すとクーラーボックスの中へと泳がせた。
「これでかーちゃんに怒られないで済むな」
独り言のようにつぶやき、また餌をつける。投げる。真っ青な海がそれを受け入れる。
ドキドキが収まらない光多だけが、どうしていいのかわからずにペタリとその場に座り込んでいる。
宮野は眉を下げ困ったように笑みを浮かべると隣へと腰を下ろした。
「ごめん、急に困らせたよな。でもずっと言いたかったんだ、好きだって」
「……うん」
「光多のこと、そういう風に見てるんだけど、気持ち悪かったら逃げていいよ」
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