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気持ち悪いかと問われたらそれは、否、だ。
だけど宮野以外の男友達に言われたら冗談だと思ったかもしれないし、速攻お断りしていたことだろう。抱きしめられてときめくなんて論外だ。
宮野だから、平気だったしドキドキした。
「嫌じゃないよ、ほんとに嫌じゃない。でも、どうしたらいいか、わかんなくて、ごめん」
「うん」
宮野は穏やかに微笑みながら、ほんの少し体をずらし光多との距離を開けた。光多に逃げるすきを与えるかのように。それがやけに悲しくて、光多は宮野に腕を伸ばす。
「いなくなるのとか、無しな。みゃーちゃんのいないこの場所なんて考えられないから」
好きかと問われれば、好きだ。大切だし、いなくならないでほしい、ずっとそばにいたい。宮野のいない毎日なんて考えたこともなかった。
「これって、俺も好きだってこと、なの?」
恋愛には疎くて、誰かを好きになったことが一度もない光多にはまだわからない。だけど宮野がいなくなることだけは耐えられない。
泣きそうに顔を歪める光多に気がついたのか、宮野は背中を撫でながら「わかったよ」と頷いた。
「いなくならない。っつか、光多が嫌じゃないならずっと隣にいてもいい?」
「うん」
まだこの気持ちが恋だとは思えない。だけど、離れたくない。宮野の隣にいたい。
「みゃーちゃんといたい」
それが今の答え。
太陽がジリジリと二人を照らしている。
熱く汗ばむ季節がやってくる。
釣り竿がもう一度、ちりんと音を立てた。
fin
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