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雨に濡れた彼女
外から、聞こえてくる激しい雨のせいで、そのインターホンの音は、いつもと違い、か細く、消え入るような、音だった。
ずぶ濡れになった自分の体を拭いて、熱いシャワーを浴びようと、思ってた矢先の出来事だったので、
正直、鬱陶しい思いが、先に立った。 ワンルームアパートのユニットバスの前から、ドアの覗き穴の前まで、5、6歩だが、憂鬱な気持ちは、増すばかりだった。
覗き穴から、外の様子を見ると、蛍光灯の明かりの元、照らされた俯いた女性が佇んでいた。 誰だか直ぐにわかった僕は、慌てて、扉を開けた。
「どうしたのですか? 」と驚きと、好意の笑顔を浮かべながら言った。
「こんな、時間にすみません。 迷惑じゃなかった?」と彼女の低い落ち着いた声が、言った。
彼女の白いブラウスは、ずぶ濡れで、胸の形まで、はっきり分かるくらいで、肩まである黒い髪毛からも、水滴が、滴り落ちていた。
「え? 僕は大丈夫ですけど、どうかしたんですか?」と不安と心配を織り交ぜた、僕は言った。
涼しげな、切れ長の目と綺麗な鼻筋と、小さ目の口の、この女性が、前から僕は気になっていた。
「あの、鍵をなくしてしまって、困ってるんだけど、、、」と彼女は、切れ長の目を伏せながら、困惑気味の様子だった。
「あの、もう良ければ、中に入ってください。 タオルと、着替えくらい、出しますよ。」と緊張を隠し、平常な顔を作って、彼女に向かって言った。
「ありがとう、お言葉に甘えて、お邪魔させてもらおうかな」と照れながら、彼女は笑顔を見せながら言った。
中に入った、彼女にタオルと着替えを渡し、ユニットバスで、着替えるように、促した。
175cmの僕より、少しだけ、背の低い彼女に、僕の白いTシャツと黒のスウェットパンツは、驚く程、似合っていた。 彼女を、ソファに座らせ、熱いコーヒーを二つ持って、テーブルに置き、彼女の対面に座ろうとした、刹那、
「ねぇ、隣に座らない?」と彼女は、目を見開いて、妖艶な笑みを八重歯を見せながら、言った。
躊躇して、立ち尽くす、僕に、彼女は、「君の家でしょ、隣に座ってよ」とイタズラっぽい笑顔で再び、僕を誘ってきた。
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