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「うぅ……ひぐっ……ここから、出たい……誰かぁ……」
灰色の壁に囲まれた部屋で、サリエはぐずぐずと泣きじゃくっていた。
身寄りのない少年――サリエが引き取られたのは、街が運営する児童養護施設。食事、運動、睡眠といった必要最低限の生活基盤を保証し、子供を擁護してくれるという、名前の通り善意で形成されているような場所。
だが、サリエにとっては違う。
何故ならこの施設は、外部との繋がりが断たれた閉鎖空間だから。
物心ついた少年にとっては監獄に等しい場所なのだ。
庭より外には出られないし、外部の話を聞かせてもらえることもない。
脱走などしようものなら施設の追っ手がやってきて、捕まれば厳しいペナルティがある。ペナルティというのは、規則を破った罰として鉄格子の牢屋に閉じ込められ、そのまま一週間食事も与えられずに過ごすこと。
無論、そんな仕打ちをすれば死者が出る場合もあるが、この街で死んでも全く意味がない。
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