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なぜなら、
「いっ……生き返ったって、全然幸せにならないじゃん……」
――街の神木『再生の木』によって、人が死んでも明日には生き返るからだ。
毎日夜の十二時、山奥にあるレゲネラチオは胞子を放つ。胞子はあらゆる生命体の体を再生させて怪我を治し、死者でさえも蘇生させてしまう。
効果は人間以外の生物、犬や猫はもちろん昆虫や植物にまで及ぶ。しかしその他の無機物などは再生しないため、壊れたら人力で直さなくてはならない。
どんな酷い死に様を晒しても次の日には元通り。世界中で最も幸せだと言われるこの街『フェリチタ』に、サリエは住んでいる。
サリエがフェリチタにやって来た経緯は、父アンディに促されたことが発端だ。
元々同居していたアンディは、サリエに街へ行けと言った。無知なサリエは何の疑いも持たず、好奇心に任せて街へやってきたが。
フェリチタの都心部へ向かう途中、サリエは知らない大人に声をかけられた。ほんの軽い気持ちで大人達に着いていった先に、この施設へ辿り着いた。
知らない人間について行ったらダメだなんて小学生レベルの教え。
それを守らなかったことを激しく後悔しても後の祭りだ。
「うぅ、ひぐっ……こんな所来なきゃ良かった……。一生ここで過ごすの嫌だよ」
施設の外の世界を知らないまま一ヶ月が過ぎ、サリエの心には限界が来ていた。
脱走を試みるも、やむなく失敗して牢屋に閉じ込められている現状。そうして飲まず食わずのまま一日が経過した。
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