第1話 『脱走の果て』

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「えぅ……お腹、空いたぁ……」  児童養護施設とは名ばかりで詐欺も良いところ。異常な大人達はこのやり方を躾と言い張る。  他の子供達は規則を守る『良い子』ばかりで、ペナルティを受ける者は滅多にいない。  そんな子達や施設の大人達から見れば、サリエはルールを破る悪い子なのだ。  馴染めないから悪いのか。  それとも、施設にさえ来なければ別の世界が見られたのか。  いずれにせよ、サリエはこの場所で生きる意味が分からなくなった。 「――いっそのこと死にたい」  もはや泣き疲れて鬱状態になり、泣き腫らした目で銀の柵を眺めていた。疲労のせいで頭がぼんやりし、銀色の床に力なく座り込む。  そのまま鉄格子にもたれかかってため息をついた。
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