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「はぁ……。ん?」
ぎぎ、と鉄のすれる音がした。
「――!?」
体重をかけた鉄格子が動いたので、サリエは咄嗟に床へ手をついて体を支える。見ると、鉄格子が開いて隙間ができていた。
「え、な……なんで……?」
そういえば、と思い出した。大人はサリエを牢屋にぶち込んだ後、鉄格子を乱暴に閉めただけで鍵はかけていなかった。
――こんな大事なことを見逃していたなんて。
心拍数が跳ね上がる。
幸い、今いる牢屋から施設の外へ繋がる扉はすぐ近くだ。右を向けば見える位置。
そしてこの場にいるのはサリエ一人だけ。
「――行こう」
声を出す前に足が動いていた。このチャンスは二度とないかもしれないから、失敗はできない。
どこへ向かうかなんて決めていなかった。ただ忌々しい場所から離れるためだけに、ひたすら走るのだ。
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