衝動の帰結

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 私が死んだ理由。それはビルの屋上から飛び降りたから。  でもそれは物理的な原因で、私が屋上から飛び降りるに至った理由こそが重要だ。  就活に失敗してあてのないバイト生活に嫌気がさしたからだろうか?  学生時代片思いしていた男が、先週結婚したと聞いたからだろうか?  そう言えば今週はバイトのシフトを入れなかったから、アパートからほとんど出ていない。両親と最後にあったのは何年前だろう? 友人とあって話をしたのさえきっと何ヶ月も前の話だ。  いい年してフリーターの私と、ちゃんと働いている友人。同じ目線でいたはずなのに、いつの間にか引け目を感じる様になった。私のくだらないプライドが邪魔をして会うのが億劫になった。  私が死んだ理由。  それはプライドの問題だろうか?  私が死ぬにはそのどれも、不十分な気がする。あるいはいろんな事が合わさって私は死のうと思ったのだろうか?  私が死んだ理由。  実は私はわかってる。あまりにもくだらなくてカッコ悪いから、もっと都合のいい理由を探していただけだ。  私は虚しかった。ただ淡々とすぎていく日常の中に私を見てくれる人が誰もいないのが。  私は寂しかった。ただ、歳だけが積み重なって、私と言う存在が停滞し続けるのが。  くだらないと言われるから言いたくなかった。バカじゃないと言われるから言いたくなかった。でもどうせ最後だからカッコつけてもしょうがないよね。  ほんのちょっとの勢いだった。ここから飛び降りたらどうなるだろうと思ったのだ。その小さな好奇心に勝てなかった。  私は思ったのだ。私が死ねば誰かが私を見てくれるではないかと。  私は望んだのだ。私が死ねばきっと誰かの心に残るだろうと。  バカなことしたな。私は最後に思った。
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