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俺が姿を現さないのを、仕留めたと判断したのだろうか?
未だ鈍痛支配する体をゆっくりと起こし、湖の気配を探る。しかし、それでもなお竜が姿を見せる様子はない。
ほっと胸を撫で下ろすも、すぐに気を引き締める。俺が生きていると知れたらまたビームの餌食だ。
虫が這うような速度で、壁穴の死角へ身を寄せる。途中、幸いにも吹き飛ばされていた眼鏡を回収できた。
びしょ濡れだが、レンズもフレームも無事だ。即装着し、焦点の合ったクリアな視界を取り戻す。
蘇った視界が最初に映したのは、床に転がる粉々の槍の姿だった。
ここに来るまで数々の魔物を撃退してくれた雄姿はそこにはない。木製の柄は痛々しさを感じさせるほどにバラバラに砕け、施設にぶつかったのだろうか、穂先は明後日の方向にひしゃげてしまっていた。
あの兵士さんには悪いことしちまったな……心の中で槍を貸してくれた兵士への謝罪と、借り物ながら頼もしく活躍してくれた武器への感謝を告げる。
その次に目に入ったのは、数々の機械類だった。
一昔前の悪の組織が揃えるような、数多くのランプやツマミをくっつけた箱が、大小問わずひしめき合っている。奥の壁にはモニターらしきものが壁に据えられているが、ビームが直撃したのか、半分が破損して失われていた。
それらの機械には、必須のはずのコンセントのコードが一切見当たらなかった。
その機器類のどれもが水浸しで、ビームの影響か老化のためか、今は稼働していないと思えるものばかりだった。
しかし、一部の機器はまだかすかにランプを点滅させているものもあった。
そこで俺はようやく思い当たった。ここは、あの開かなかった三階の部屋の中ではないか、と。
今は聞こえないが、あの電子音はこいつらが発していたものじゃないかと。
右手を膝に付き、覚束ない足を踏ん張って立ち上がる。壁の外を警戒しながら、まだわずかな明滅を繰り返す装置の一つに近づき、あちこちいじってみた。
想像していた通りのものだ。
コードがないのにまだランプが光っているのは、これが魔素で動く魔動機器とでも言うべきものだからだ。注視すると、ほんの薄ぼんやりと、機器を魔素が覆っているのがわかる。
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