続々第一話 音の鳴らないオルゴール

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続々第一話 音の鳴らないオルゴール

みなさんは、オルゴールを持っていますか? 俺は持っていません。 いえ。 持たないようにしています。 オルゴールは昔から大好きで、今でも、全国にあるオルゴールミュージアムを見て回っては、その美しい音色に耳を澄ませています。 あの音色。 ほんと癒されますよね? 小さな小箱の蓋を開けると 箱からこぼれ出す、キラキラ輝く音のせせらぎ。 本当はすっごい好きなんです。 ですが 昔出逢った、一機のオルゴールの音色が、今でも俺の胸に響いているから、他のオルゴールを持つことが出来ないんです。 これは 俺が出逢った とても哀しくて 世界でいちばんやさしいオルゴールのお話です。 *** 「久しぶりだねぇ!ケンちゃんフェンちゃん。大きくなって!」 兄貴が高1で、俺が中1の初夏。 久しぶりに母方の寺に帰った。 大分県別府市の親戚に不幸があり、同じ県内にあるこの寺で葬儀をするとのことで、母と兄と三人でこの寺に帰った。 「じいちゃんも元気そうだね。伯父さんに代替わりして、講演だ説法だってあちこち飛び回ってるらしいじゃん。身体大丈夫かなぁって心配してたんだよ?」 じいちゃんはおどけて、俺らに軽くウィンクをして見せた。     
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