続々第一話 音の鳴らないオルゴール

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「ね。それくらい、彼女はたくさんの子供たちを導いてあげて来たんだよ。もう、彼女を休ませてあげたいって病院の依頼で、私が供養を引き受けたんだよ。本当にやさしい子だね。地蔵菩薩のような子だ。」 ──あの声。 あのとき、じいちゃんの力強い声ともうひとつ。 やさしい、あたたかい声が、俺を掴んで引き戻してくれた。 たぶん、その女の子だ。 「……逢ったよ…たぶん…。その子が俺を掴んでくれた。」 じいちゃんは、うんうんとにこやかにうなずいて、オルゴールに手を合わせた。 俺も起き上がり、じいちゃんの横でオルゴールに手を合わせて、ふたりで成仏の御経を供えた。 「やさしい者から、順番で神様は御元に召されるんだよ。」 カソリックの言い伝えにはある。 世界中で今、 この瞬間にも失われていく、この世界で生きるにはやさしすぎた子供たちの魂に、いつも彼女は寄り添っているんだろう。 大丈夫だよ。ひとりじゃないんだよって。 迷わないように、手を引いて、連れて行ってるんだろう。 オルゴールの音を聴くと 今でも想い出すんだ。 とても哀しくて 世界でいちばんやさしい彼女のオルゴールを。 どうかみんな、やすらかに。 Love finfen.
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