12人が本棚に入れています
本棚に追加
「なーになに大丈夫だよ。私はまだ若いんだ。それに、代替わりしたとはいえ、遊んでるなんてお山が許してはくれないからね。仏の世界って意外と厳しいんだよ?死ぬまで働かされるんだ。ははは。」
当時じいちゃんは70歳は超えていたと思う。
僧位も最高位だったじいちゃんは、日蓮宗本山に頼まれて、全国各地にある日蓮宗のお寺を巡っては、説法をしたり、若い僧侶の育成をしたり大忙しだった。
「まぁ、ほどほどにしてね?俺もまだまだじいちゃんには教わってないことや、聞きたいこと、たくさんあるんだからね?」
そう言うとじいちゃんは、俺がまだまだ絶対に届かないすっごい笑顔で笑って、
「フェンちゃんは大丈夫だよ。私が教えられることなんて、もうないはずだからね。」
と、またウィンクした。
じいちゃんに大丈夫って言われると、本当に大丈夫な気がしてしまう。
じいちゃんが笑うと、何もかもが洗われる気がする。
俺の変なものを見聞き出来るという特異な力を、俺がまだ幼い頃から理解してくれていて、それでも、普通の子として可愛がってくれ、その力と共に生きる為の方向も教えてくれたじいちゃん。
俺に、この、魔を退け身を護るための妙法を、教えてくれたのもじいちゃん。
今も忘れない。
あの笑顔には、一生かかっても敵わないだろう。
***
最初のコメントを投稿しよう!