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母の快癒祈願に神社に行った。
母が倒れてもう三ヶ月、それまでにも親類や母の友人達が何度も見舞ってくれているが、母の容態は芳しくない。
会話は成立するものの、身体と同時に心も弱っているようで、みているだけしかできないのも、つらいのだ。
そんな中で、ネットの知人が教えてくれた、病気治癒に御利益があるという神社。決して大きくはないが、佇まいはそのぶん閑静で、なんだかここなら確かに、と言う気がする。
なんというか、空気が澄んでいるのだ。明らかに、他の場所とは違うというかんじで、心地が良い。
手水舎で手を清め、それから本殿に向かって二礼二拍一礼。
私は一心不乱に、健康を、快癒を願う。
無論、こんな事が気休めに過ぎないのは判っている。それでも神にすがりつきたくなるのは、日本人だからなのだろうか。
風が髪を弄ぶ。
その風に紛れて、なにごとか声が聞こえたような気がした。
「たすけてほしいかい?」
こう聞こえた、気がした。
次の瞬間、私は訳も分からず頷いていた。
だって、たった一人の母なのだ。
助けて欲しいと言って、何がおかしいのだろう?
――翌日、母は急に体調を崩し、集中治療室に入ることとなった。
本当に急変で、私もわけが分からなかった。
昨日のあの声はなんだったのか。やはりただの空耳だったのか。
おろおろと母のための荷物をつくって、病院に運ぶ。
私はそのまま、待合室のソファで寝込んでしまった。
ここ最近、体調は確かに余りよくはなかった。
でも私も入院することになるなんて。ねんのために私自身、検査入院をしたら、私も病魔に冒されていることが判明した。
「まだ若いから、早めに見つかって良かったですよ」
そう、担当医は告げる。
……その声は、神社で聞いた風の声に、似ている気がした。
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