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放課後の教室を優しい夕日が染め上げる。外から聞こえるのは、部活動に励む生徒の声。
窓際の私の席は茜色に染めあげられている。
頬杖をつきながら窓の外を見れば、今日も彼がボールを追って走っているのが見えた。
どうしてだか彼だけキラキラ輝いている。別に私を見ているわけじゃないのに、彼が此方を見ただけで頬に熱が集まって、胸がどきどき騒がしくてたまらない。
私に気づいて欲しいけど、気付かれたくない。
相反する二つの想いがぐるぐると回る。
教室にちらほら残っていた生徒も居なくなり、薄暗くなる教室に一人取り残された。
昼間の騒がしさからは一転、しんと静まり返っていて寂しい。
部活動の声も聞こえなくなる。
ちらりと窓の外を見れば、彼は居ない。私ももう帰ろう。
明日も彼をそっと見るんだ。そわそわとした気持ちが湧き上がる。軽くスキップしながら階段を降り、踊り場で軽くステップ。制服のスカートがひらりと揺れる。
鼻歌交じりに下駄箱に行き、靴を履き替えて私の世界は止まってしまった。
目の前を女子生徒と男子生徒が肩を寄せ合って下校していく。
あれは紛れも無く--。
放課後の教室を優しい夕日が染め上げる。今日も私は窓際の席で彼を見る。
ボールを追って走っていく彼を。
窓枠はまるで額縁のようだ。彼だけを切り取って見せてくれる。私の世界はこんなにも彼でいっぱいなのに
「なのに……」
彼の世界に私は居ない。夕日の茜色がぼやけて、彼の姿は滲んで消えた。
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