第1話

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第1話

ーーピロリ。 夜遅くにスマホが鳴った。 持ち主は訝しげにそれを見る。 通話、メール、対外的なツールは未使用である。 もっぱら『ソシャゲ専用機』と化したモバイルフォンをまじまじと眺めた。 そこにはこのような文字が表示されていた。 「私メリーさん。今からあなたのところへ行くの」 ーーピロリ。 「私メリーさん。小田急線に乗って行くの」 ーーピロリ。 「私メリーさん。多摩急行でいいの?」 ーーピロリ。 「私メリーさん。湘南急行に乗りました」 ーーピロリ。 「私メリーさん。生田って遠いの?」 ーーピロリ。 「私メリーさん。通り過ぎちゃったよ」 「どうしよう。これ降りた方が良い? それとも乗り続けた方が良いの?」 「唐木田に着きました」 「登りの電車はもう無いみたいです。とりあえず改札に行きます」 「ピンポーンって乗り越しで引っかかりました、お金は無いです」 「すいません……はい。えっと乗り越しちゃって……、お金無いんです。すいません」 「いや、親とか関係ないじゃないですか! 違います、家出じゃないです!」 「私あれですよ。結構有名な人で……小役じゃないです。CMに出てた? 人違いです」 そこで多量のメッセージが止まる。 しばらくして……。 ーーピロリ。 「私メリーさん。唐木田まで迎えに来てください」 お前が呼ぶんかい!
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