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だが、同じイタリアの同胞であっても、そんな風に思っているやつばかりではない。
人生を楽しむことを最善とするイタリア人本来の気質を忘れ、まるでナチスに傾倒するドイツ人の如く、あっさり降伏したバドリオ政権をよしとしない血気盛んな者達も少なくないのだ。
その上、どこもかしこもドイツ兵が我がもの顔で闊歩する中、俺もついつい格好をつけて義勇軍に手を挙げてしまった。
ま、「義勇軍に志願した!」と言った方が女の子にモテそうだったからというのもなくはないだが、その不純な動機で軽率にも挙手してしまった結果が、むしろ女の子とは縁もゆかりもない、野郎ばかりに囲まれたこのむさ苦しい戦場暮らしである。
ユーモアのセンスが欠如した、頭コチコチのゲルマン人にドイツ式軍隊の厳しい訓練を受けた後、俺の配属された先は第8ベルサリエリ義勇連隊「ルチアーノ・マナーラ」の第2大隊だった。
この第2大隊は〝M42突撃砲(※歩兵支援の戦車みたいなもの)〟というお高いおもちゃをわずかに与えられた第4師団「イタリア」の 歩兵師団へ補充され、破竹の勢いで攻め上って来る連合軍と、加えて同胞のパルチザン(※ゲリラ)相手に日々、まさに死と隣りあわせの過酷極まりない戦闘を強いられている。
地獄の猛特訓の先に待っていたものは、それを上回る本当の地獄だったというわけだ。
そして、その時は唐突に……いや、覚悟していないわけではなかったが、あまりにもあっさりと、ごく自然なことのように訪れた――。
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