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これは、マズイことになった……。
普通なら、友軍が助けに来た! と喜ぶところかもしれない……だが、残念なことにも彼らはおそらく…否、ほぼ100%の高確率で、俺達がここに捕らわれていることを知らないのだ。となれば、当然、こちらの身の安全など気にかけず、情け容赦のない攻撃を加えてくること必定である。
にもかかわらず、捕虜の身では勝手に逃げ出すわけにもいかず、俺達はこの薄い布一枚の屋根に守られたテントの中で、味方の撃ち込んで来る砲弾の雨に晒されることとなるのだ。
終わったな……まさか、こんなテントの中で人生の幕を閉じようとは……。
俺は隊の皆とともに、今度こそ覚悟を決めた。
「ヘイ! イタリィ!」
しかし、どうやら神は我々をお見捨てにはならなかったらしい……。
「ここは危ない! 早く安全な場所へ移動して隠れるんだ!」
幕が閉じるどころかテントの入口を覆う幕が開くと、ひょっこり顔を出した英国紳士の御使いが思わぬ福音をもたらしてくれる。
予想外にもこの緊急事態に、英国軍は俺達の身を案じてくれたようである。さすが、ジェントルマンの国UKだ!
まあ、これまでの態度からして抵抗の意志はないものと判断したのであろう。拘束の縄を解かれた俺達はそのご厚意に甘え、少し離れた場所にある窪地へ転がるように逃げ込んだ。
せっかく神が与えたもうたこの一筋の光明を、けして無駄にしてなるものか!
黒い夜の闇の中、鳴り響く地響きと轟音。稲妻の如く瞬間的に戦場の景色を白々と映し出す爆発光の下、俺達は芋虫のように丸まって、死の恐怖と戦いながら必死にその時間を耐え忍んだ。
…………どれくらい時が経ったであろうか?
山の稜線が美しいオレンジ色に染まり始めた頃、ようやく辺りは嘘みたいに静寂を取り戻していた。
キーンと微かに痺れるような耳鳴りを感じながら、恐る恐る窪地を這い出して周囲を見渡してみると、陣地は徹底的に破壊され、穴ぼこだらけの乾いた地面には英国兵の死体が方々に力なく転がっている。
やがて、立ち込める爆煙の向こうからドイツ歩兵の一団が突撃砲を引き連れて現れ、連合軍に奪い取られたこの地は再びドイツ・RSI側に取り戻された。
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