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おれは雨雲の上でごろりと横になって、その上で輝いてる太陽サマを見上げていた。最近あいつは遅刻がひどくなっている。
少し遠くの白い雲の中からあいつが飛んでくる。
「ごめん、アメアメー。遅くなったー」
「知ってた。今週何回目だよ」
ハレハレが俺の雨雲の上に着地してすぐそばに座った。
「よしじゃ、決めるか」
「面倒だよねー。毎日決めなくちゃいけないって」
「そういや、クモクモは?」
「風邪ひいて寝込んでる」
「じゃ今日もおれたちだけでやるか」
起き上がって指をペキポキ鳴らす。「せーの」
「さいしょはグ! ジャンケンポイ!」
ハレハレがパー、おれがグー。
「また負けかよ」
「アメアメ六月になると急に弱くなるよね」
「うるせえ。ま、今日も下は雨だな」
「だね。じゃ、あとよろしくー」
ここ一週間ほど仕事のないこいつはのんきなものだ。実際負けているのはおれなので何も言えないが。
「ちっ。しゃーない。フウフウ呼ぶか」
立ち上がってさっとまわりを見渡す。
「いねえ。また下界下りてんのか」
「すいませーん」
わざわざ太陽を背に浴びて下りてきたのは、天然の新卒だ。
「私の出番ってまだですか?」
「わりいな。また負けた」
「早く勝ってくださいよ~。私の初仕事がいつまでたってもできません」
「わざとでも負けないハレハレが悪い」
「ただのジャンケンで十連敗なんてすごいですね」
「それは煽ってんのか? ニジニジ」
にらみを利かせると、新卒は何を勘違いしたのか照れくさそうに笑った。
意味わかんねえ。
「ニジニジ、おれこれからフウフウ探しに下界行くけど来るか?」
「わ~い、行きます行きますぅ~」
「じゃ、行くか」
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