神山先生

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神山先生

 珍客が訪れてくれました!    十年ぶりにもなるでしょうか、経営コンサルタントをしていらした神山先生です。 「ばあさんになったな」 「先生こそすっかりおじいさんになられて…」  変わらぬ毒舌に応酬しながらなつかしさがつのって抱き合ってしまいました。  実は、このところ幾度となく神山先生を思い出していたのです。  ゴールデンウィークが過ぎた後の銀座の街は客足が減り、閑散を極めていました。    表に立ってそうした通りを眺めていると、神山先生が口癖のようにおっしゃっていた言葉が不思議と思い出されました。 「…銀座のクラブなんてのは、資本主義が生んだ最も無用な産物の一つだ。そのうちには必ず消えてなくなる」  とか、 「…座っただけで数万円も請求したり、ホステスにしたってたいした接待も出来んくせに五千円だの一万円だのの時給もらいやがって…こんなのがいつまでも続くわけがないだろう!」  それはし烈に、おっしゃっていたのです。  しかしながら今日の先生は、以前の悪口はどこ吹く風で、 「よく頑張ったな、えらいよ」  穏やかな笑顔でほめて下さいました。  長く店を続けていると時折こうした珍客が訪れてくれます。  嬉しいし、ありがたいし、何より元気をもらえます。  折れることも多々ありますがもう少し頑張ってみようという気持ちにさせられます。
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