きれいじゃないママたち

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きれいじゃないママたち

『銀座のママに美人はいない』とはよく聞く話です。  当店の女性と並木通りを歩いていた時です。 「あ、あの太ったメガネのママ、この前テレビに出てましたよ!」  通りの向こう側を指差して彼女が叫びました。  総絞りの、高そうな和服で歩いていたのは界隈では有名なママです。   「出世する男は一目でわかるって言ってましたけど、本当ですか?」 「さあ、どうなんでしょうね」  彼女の話によると銀座のママ連中が20人ほどひな壇に並んで、女性芸人たちに『出来る男の見分け方』をレクチャーしていたそうです。 「その時思ったんですけど、銀座のママってきれいな人いないですよね」 「そうお? たまたまじゃない? きれいなママだって知ってるわよ」  切り返しましたが、彼女が言ったことはほぼほぼ当たっています。  以前はママたちばかりが利用する美容室に通っていましたが、目を奪われる美人に遭遇したことはありませんし、街を歩いていても然りです。  働いているホステスの方がよほどきれいです。  しかしながら美人でない分、ママたちは努力家です。  経済の勉強や情報収集などはもとより、お客様に誘われればやったこともないゴルフも始めるし、セミナー等に参加して自分磨きも忘れません。  仕事につながることなら何でもやります。  そうした努力を続けていると、お客様への気遣いや、空気を読む資質などもアップして来ます。  だから彼女たちは堂々としています。  どんな大物を前にしてもひるまない心意気を持っているからです。  そしてそうしたママたちが銀座を支えています。     だから、きれいとか、きれいじゃないとかそんなことどうでもいい話です。  次元が違います。              
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