14人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
きれいじゃないママたち
『銀座のママに美人はいない』とはよく聞く話です。
当店の女性と並木通りを歩いていた時です。
「あ、あの太ったメガネのママ、この前テレビに出てましたよ!」
通りの向こう側を指差して彼女が叫びました。
総絞りの、高そうな和服で歩いていたのは界隈では有名なママです。
「出世する男は一目でわかるって言ってましたけど、本当ですか?」
「さあ、どうなんでしょうね」
彼女の話によると銀座のママ連中が20人ほどひな壇に並んで、女性芸人たちに『出来る男の見分け方』をレクチャーしていたそうです。
「その時思ったんですけど、銀座のママってきれいな人いないですよね」
「そうお? たまたまじゃない? きれいなママだって知ってるわよ」
切り返しましたが、彼女が言ったことはほぼほぼ当たっています。
以前はママたちばかりが利用する美容室に通っていましたが、目を奪われる美人に遭遇したことはありませんし、街を歩いていても然りです。
働いているホステスの方がよほどきれいです。
しかしながら美人でない分、ママたちは努力家です。
経済の勉強や情報収集などはもとより、お客様に誘われればやったこともないゴルフも始めるし、セミナー等に参加して自分磨きも忘れません。
仕事につながることなら何でもやります。
そうした努力を続けていると、お客様への気遣いや、空気を読む資質などもアップして来ます。
だから彼女たちは堂々としています。
どんな大物を前にしてもひるまない心意気を持っているからです。
そしてそうしたママたちが銀座を支えています。
だから、きれいとか、きれいじゃないとかそんなことどうでもいい話です。
次元が違います。
最初のコメントを投稿しよう!