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給料問題
当店の場合、女性のお給料は全員一律です。
新人も古参も同じということです。
お店を始める時、勤めていたクラブでイヤだったことを極力排除しようと決めました。
お客様への電話当番とか、強制同伴とか、お給料の差別とかです。
お給料の差別はこと深刻で、ホステスたちはしょっちゅう争っていました。
「なんで、あんたが私より高いわけ? 店長と寝たの?」
のの知り合いや取っ組み合いも何度も目撃しました。
その時の教訓や優劣をつけたくない気持ちもあって一律を通しているわけですが、問題がないわけではありません。
「皆と同じ給料なんてあり得ない!」
とやめたモデルの女性もいましたし、昨日、めぐみも、
「新人のまどかちゃんと同じ時給なんて納得できません。彼女、未経験で会話だって出来ないのに…不公平だと思います」
不満顔で訴えてきました
めぐみは、三年ほどいるので固定客もついているし、強制じゃないのに同伴もしてくれます。
会話も達者です。
あちこちの店を転々として、ようやく当店に落ち着いたそうですからやめることはないと思うものの、一考が必要かもしれません。
給料は一律でも良くやってくれる女性や、長くいてくれる女性にはそれなりの手当てをと思いながら実行できていないのです。
不甲斐ないママです。
頭を悩ませているところへ、コンサルタント会社の愛沢社長が専務と見えました。
会話の流れから出身地の話になりました。
愛沢社長が、真向かいに大人しく座っているまどかちゃんに、
「君は新顔だね。出身はどこ?」
と訊ねました。
「福島です」
「福島のどこ?」
「浜側の南相馬です」
とたん、社長が身を乗り出しました。
「私の父母もそこの出身なんだよ。震災は大丈夫だったのかい?」
南相馬市は東日本大震災の折、津波と原発事故の2つの大災害に見舞われた街です。
「おばあちゃんが全壊した家の下敷きで亡くなりました」
「そう。気の毒だったね。私の両親は東京に移っていたから難を免れたけど」
「社長は南相馬を支援されているんですよ」
専務の言葉に、
「ありがとうございます」
まどかちゃんは真摯に頭を下げました。
「今度食事に行こう。同じ県人同士、仲良くしないと」
縁とはこうしてつながるようです。
新人ほやほやのまどかちゃんにBIGなお客様がつきました。
とりあえずはほっとしました。
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