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出入り禁止
かなり面倒なお客様がいらっしゃいます。
曽我さんとおっしゃって、建設機械のレンタル会社にお勤めです。
彼がどのように面倒かと言いますと、例えば閉店時間になって女性たちが帰ろうとすると、
「客を残して帰る店なんか聞いたことがない」
とイヤミを言いますし、
ご接待されているお客様のカラオケ採点が悪い時は、
「だから点数の調節出来るカラオケに変えてくれって頼んだんだよ。怒らせてしまったじゃないか」
こちらのせいにして責めます。
外国人を接待なさるわけでもないのに、英語をしゃべれる女性がいないことにさえケチをつけます。
とにかく口やかましく、そんなに気にいらないなら来なきゃいいのにと、ついこちらも開き直ってしまうのですが、何故か見えるのです。
先日のことです。
「店が終わったら皆で寿司屋に行こうよ」
と女性たちを誘っていたのですが、
「朝が早いので…」
「最終に乗り遅れるので…」
彼女らはそそくさと帰ってしまいました。
曽我さんは女性たちに嫌われているのを知らなかったようです。
全員にふられた彼は、
「俺だって朝早いよ」
「ここの女どもは客をなめてんな」
ふて腐れ、あげくには、
「ママの教育が悪いからだよ」
と言いがかりをつけ始めました。
腹が立つよりも面倒くさくて、
「それならもう当店には見えないで下さい。他の店を探して下さい」
出入り禁止を口にしてしまいました。
一週間後、曽我さんの部下が菓子折りを持って見えました。
あの時同席していた課長代理です。
「先日はすみませんでした」
謝罪した後に、
「うちの曽我を許してもらえませんか? あんなことを言っても曽我はこちらの店が大好きなんですよ。曽我の得意先もこちらの店を気に入っているし、何とか…」
必死に頼まれても、曽我さんのあの悪態を思うと首を縦に振れません。
「うちの会社は弱小だけど大手には負けない」
は、曽我さんの口癖です。
会社を背負っているとも聞かされましたし、だからこそ当店も後押しして差し上げたいと、恩着せがましいようですが、ご飲食代も考慮していた次第です。
それなのに…という私の残念さがわかりますか、曽我さん?
自業自得です。
勉強し直して下さい。
偉そうですみませんが、それまで出禁を解除することは出来ません。
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