大遅刻

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大遅刻

 今朝の天気予報では午後から雨だと言っていた。  いつもなら雨が嫌いな僕はどんよりとした気分になるけれど、今日は違った。  何故なら彼女とデートの約束があるから。  デートと言っても予定は特に決めていない。思いのままにお喋りしたり、食事をしたり、遊びに行ったりと成り行き任せだ。  僕は彼女に会えるというだけで嬉しさのあまり、朝から胸の高鳴りが抑えられなかった。  それなのに、  「いつもありがとうヒーローさん! 」  「どうってことないさ。ヒーローとして当然の務めだからね。次からは気をつけるんだよお嬢ちゃん」  またしても僕は人助けを優先してしまった。  先程まで泣いていた女の子は、満面の笑みでお礼を言うと手を振って去っていく。  一緒にいる母親も微笑んで頭を下げていた。  迷子の女の子を見つけた僕は放っておくことができず、親を探し回った。親は十分ほどで見つかり、女の子は無事帰っていったのだが。  ──デートの待ち合わせ時刻から二時間が過ぎている。
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