大遅刻

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 僕にとって人助けは日課であり日常茶飯事だ。  今日も今日とて、デートの約束をしていたにも関わらず人助け三昧。  一人目は財布を落とした男性。非常に焦っているようだったから探すのを手伝った。  二人目は捻挫した少年。段差に躓いたらしく、痛みで歩けないようだったから病院までおぶって行った。  三人目は襲われていた女の子。人目につきにくい路地裏で、柄の悪い男が寄り集まっていたので声をかけたら殴り合いになった。  四人目が先程帰っていった迷子の女の子。道端で泣いていたから話を聞いたら、親とはぐれたと言うので親を探し回っていた。  助けた人はみんな嬉しそうにお礼を言ってくれた。  常日頃からこんなことをしているものだから、僕は街のみんなから「ヒーローさん」なんて呼ばれている。  そうまでして人助けをする理由はいたってシンプル。僕は困っている人を見たらたら放っておけないタチなのだ。  知らんぷりなどもってのほか、助けなかった後には罪悪感に苛まれるほど。  でも、助けた後に「ありがとう」と言って笑顔になってくれるのが本当に嬉しい。だから人助けが生き甲斐でもあるのだ。  だけど今の僕は、ヒーローなんて呼ばれる資格はない。  好きな人一人、笑顔にできないのだから。
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