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僕は全速力で走っていた。待ち合わせ場所は公園の噴水前。
約束の時間はとっくに過ぎているのに、まだ彼女が待っていてくれたら良いだなんて思うのは傲慢だろうか。
普通に考えればもう帰っているに違いないのに。
二時間も遅れて行くなんて我ながらバカらしいと思ったけれど、それでも向かった。
──待ち合わせ場所に、彼女はいなかった。
「はは……。当たり前か」
予想していたことだ。僕は驚くわけでもなく、少しだけ虚しい気持ちになる。
そんな心の内を見透かしたように、曇り空から雨粒が降ってきた。
雨足はすぐに強まり、僕の髪や洋服を濡らしていく。頬を伝う水滴が涙のようだった。
「初めて彼女に出会ったときも、こんなふうに雨が降ってたっけ」
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