大遅刻

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 その日から、彼女とは少しずつ話すようになった。会ったときにたわいもない会話をする程度の仲だったが、僕にとっては彼女と一緒にいられるだけで満足だった。  彼女の言葉一つ一つや柔らかい笑顔が癒しだった。  僕が彼女に対して抱く感情は恋と呼べるほど高尚ではないかもしれないけれど、好きだ思う気持ちは紛れもなく本当のことだ。  その思いを口にする勇気はなく、代わりにデートに誘ったら難なく承諾してもらえた。  だからデート当日の今日を楽しみにしていたのに。  「僕は本当にバカだな。彼女にはきっと嫌われてしまっただろう……仕方ない」  降りしきる雨の中、一人呟いて帰ろうとしたときだった。  「あんまり遅いので、待ちくたびれちゃいました。お疲れ様です、ヒーローさん」
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