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聖なる夜には
「進まないわね…」
「そうですねぇ…」
今、私は後輩が運転する営業車で社に戻るところだ。
生憎の渋滞。
「水川さん、何か予定あるんですか?」
と聞くのは、今年入社の田澤春樹。ちなみに年は確か…私の5つ下だ。
「予定?別にないけど。社に戻って書類片付けて帰るわよ。とっととね。」
見たいドラマがあるのだ。面倒だから一々言わないけど。
うっかりしてたな。
よりによって録画予約をし忘れた。まあ、このまま上手く行けばリアタイで見れるだろうとぼんやりそんな事を考えていた。
「そうじゃなくって…」
前を向いたまま、そう呟いて運転する田澤春樹の横顔を見つめる。
黒髪の短髪で、スーツ越しでも解る全体にがっしりとした体型はいかにも学生時代、体育会系であったかを物語っている。
ラグビー部って言ってたっけ?
そしてこの長い睫毛と綺麗な二重瞼ががっしりとした体格とは反面に中々の甘めフェイスを作っていた。
社内でも田澤春樹はモテる。
ーーー私なんかどれだけマスカラ盛ってると思ってんのよ…
心の中で愚痴る。
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