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ところが、一週間前からスーツの人はパタリと来なくなってしまった。
どうしたんだろう?
もしかして…転勤になっちゃったとか?
そんなぁ…
だとしたら、もう会えないのかな。
こんなことなら告白しとけばよかった……?
今日も来ないかな…
何度と鳴る来店を知らせるチャイムにハッとしては目当ての彼じゃないことに落胆する。
もう今日何度目の溜息だろうか。
陳列棚の整理をしながら来店チャイムにもう期待しちゃ駄目と思いながら声を出す。
「いらっしゃい…ま、せ…?」
ただ今の時刻、午後7時を少し回ったところ。
なのにスーツの彼が……いや、私服姿の彼が私の目の前に立っていた。
「あの…」
と言い出した彼の言葉の先を待つ。
「あの、実は風邪を拗らせて寝込んでしまって、それでろくなもん食べてなくて、やっぱ人間は日頃からちゃんとしたもの食わなきゃなって思って、あっ別にコンビニの弁当がどうとかって言うんじゃなくて…」
なんて答えたらいいのか分からなくて黙っていると
「ごめん、なんの話かわかんないよね?」
と彼。
「ちゃんと話す。今、大丈夫?」
陳列棚の整理をしていた私はレジの方を見ると私の恋事情を知る先輩達が入っていて笑顔で親指を立ててくれる。
幸い店内にはお客さんも少ない。
気の利く優しい先輩達に目でお礼を伝え「はい、大丈夫です。」と彼に向き直り答えた。
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