通り魔ゲーム

1/1
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

通り魔ゲーム

 最近手に入れたゲームは凄い。  まず最初に武器を選び、主人公に装備させて好きなフィールドに向かわせる。  そこで主人公は魔物ではなく、町行く人達を好き勝手に攻撃するのだが、なんと、俺かゲームをすると一週間以内に国内のどこかで、本当に無差別通り魔事件が起こるのだ。  どういう仕組みでそうなるのかは知らないけれど、ゲームと現実がリンクしている。  でも、ゲーム内では攻撃すると人が死ぬけれど、現実の方はせいぜい怪我をするだけ。だから罪悪感はあまり感じず、俺は毎日のようにゲームでストレスを発散していた。  学校もバイトも嫌で仕方がない。だからこのくらいの憂さ晴らしはさせてもらわなきゃ。  昨日もそんな考えで朝までゲームにのめり込んだ。そのせいでかなり寝不足だが、今日はどうしても出なきゃならない授業がある。  眠い目をこすりながら駅を向かう途中、ふいに俺の前に見知らぬ男が立ちはだかった。  二メートルはありそうな大男。こんな奴は知り合いにいないから確実に見知らぬ相手なのに、どこかで見たような気がする。  いったいどこで見かけたのか。そう思った俺の目に相手が握る刀が映った。  日本刀ではなく、どこか外国で実際に使用されてきたという、特徴的な形の刀。  それは間違いなく、俺が昨日、ゲームの中で主人公に持たせた武器だ。  ゲームとリンクして起こる通り魔事件。まさかプレイヤーである俺が巻き込まれるなんて。  鋭い刀身が目前に迫る。  一連の事件で死んだ人間はいなかったよな。だから俺もせいぜい怪我をするだけだろう。でも、刀は真っ直ぐに喉めがけて突き出されている。これで怪我ですむとは思えない。  もし命があったらあのゲームは捨てよう。  フィクションではあり得ぬ激痛を感じながら、俺は薄れる意識の中でそう思った。 通り魔ゲーム…完
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!