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しかし、幸福感に酔っているばかりではいられない。近々雪乃から別れを切り出されるのではないか。そんな危機感が、気持ちに水を差すように暗い影を落として、じくじくと存在を主張していた。
関係がぎくしゃくしていたところに、今日の失敗だ。いくら彼女を気持ちよくしてあげたところで、不満がないわけではないだろう。思うところを口にしてくれない態度も、本心では鷹瑛を拒絶したがっているように見える。
恋愛とはこれほど難しいものだっただろうか。鷹瑛がこれまで付き合った女性たちはもっとわかりやすく、扱いやすかったように思う。
雪乃を愛しく思う気持ちは鷹瑛の中で順調に育っているというのに、二人の間にはなにか噛み合わないものがある。どうやったらそれを取り除けるのか、今の鷹瑛には分からなかった。
ゆっくりと溶け始める意識に逆らわず、鷹瑛は夢の世界に旅立つ。眠りに落ちる直前、隣に眠る彼女の髪を一筋撫でた。
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