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初心な様子から鷹瑛はてっきり、雪乃は恋愛経験が乏しいものと決めてかかっていたが、彼女の男を感じさせるテクニックはどう見ても初心者のものではない。もしかして、ああいう行為の経験値だけ無闇に溜め込むようないびつな恋愛ばかりしてきたのではないだろうか。
いつも浮気されると本人も言っていた。低俗な男に一方的に利用されて自信を削られる経験ばかりを重ねてきたとしたら、彼女の萎縮しがちな態度も理解できる。
とすれば、鷹瑛はおそらく彼女にとって悪い恋人ではないはずだ。少なくとも恋人を大切に扱う。雪乃に対してもぞんざいな対応をしたことなど一度もない。雪乃は大切にされるに値する女性なのだと、本人にわからせることができれば、自分たちの関係も改善するのではないか。鷹瑛はそう踏んでいた。
「とはいえ、中には酷い男にばかり惹かれてしまう女性もいるからな……」
そもそも自分が雪乃の好みに全く合致しないということもなきにしもあらず。
これが恋愛の厄介さというものだろうか。鷹瑛は自分が女性にとってそこそこのレベルの男であると自負しているし、そうあるように努めてもいる。それで上手くやってきた。しかし恋愛は、好いた相手の価値観一つで評価も関係もひっくり返る。そんな難しい現実に初めて直面していた。
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